Bustle Pannier Crinoline

バッスル・パニエ・クリノリン

妄想・朝の連続テレビ小説「当たり屋稼業ユイ」

あらすじ


唯(杉咲花)は免許を取得した翌日のドライブで杜絵(池田エライザ)をはねてしまう。弁護士で友人の慶太(吉沢亮)から人身事故に強い弁護士として紹介された瑞彦(安田章大)は杜絵を当たり屋だと見抜く。


唯は楽しいドライブを台無しにされた怒りで杜絵を執拗につけ回すが、杜絵の当たり屋活動を目の当たりするうち、次第に杜絵の鮮やかな当たり身に魅了されている自分に気づく。


そのおかしな様子を心配する慶太をうまくあしらいつつ過ごす唯は、ある日、男性歩行者の人身事故を目撃する。轢かれた空人(眞栄田郷敦)と救急車に同乗した唯に対し、空人は自分が駆け出しの当たり屋であることをほのめかす。救急隊員が身元を確認する際に空人の名前や連絡先を入手した唯は、杜絵を付け回しつつ空人の入院する病院に通う奇妙な日々を送り始める。


そんな不審な生活を送る唯を心配した母親の富香(初音映莉子)は、交通事故で亡くなった唯の父・晃司(柳原哲也)のことを思い出して交通安全を優先して生きていってほしいと懇願し、晃司の形見である千切れた交通安全御守を手渡す。


母の言葉に、当たり屋への執着を捨てようと決意した矢先、杜絵が二人きりで会いたいと言っていると瑞彦から連絡が入る。てっきり示談の話かと思いきや、それは当たり屋集団「BUMP」への誘いだった。富香の言葉を思い出し入団を断固拒否した唯だったが、後日退院した空人から食事に誘われ、当たり屋への憧れを聞かされるうち、当たり屋への興味を捨て切ることが出来なくなり、ついに「BUMP」への入団を杜絵に告げる。


数日後、杜絵の手引きで接触した「BUMP」のメンバーである寛史(永井裕一郎)、公美子(松尾れい子)、嗣久(江原正士)は、それぞれ高い当たり身技術、当たり場の見極め能力、関連する法律の知識を有していたが、3人ともドライブレコーダーの普及や車両の事故回避性能の向上で当たり屋稼業がやりづらくなっているとして当たり屋から足を洗おうかと考えていた。


一方、杜絵は当たり屋を単なる金稼ぎの手段に留まらず文化技術と捉えており、優れた当たりの技術を継承していかなくてはならないと考えていた。そして、唯ならばその考えをわかってくれると信じていると熱弁した。唯は当たり屋修行に没頭しつつも、それを隠して空人との交際を深めていく。


杜絵の指導によりめきめきと当たりを習熟していく唯に当たり屋としての才能を感じた杜絵は、伝説的な当たり屋でありながら自分の幼い娘を当たらせるやり方が一部のメンバーの反発に遭い「BUMP」を去った聡美(城之内早苗)に会うよう唯に示唆する。


ところが聡美は、当たり屋稼業が原因で娘の美夜(大友花恋)と確執を抱えており取り付く島もなかった。当たりの先に親子の和解があると信じた唯は、策を講じて聡美と美夜を同じ場所に呼び出し、渾身の当たり身を見せた。ところが、唯をはねた車は停車前にさらに別の女性をはねた。はねられた女性・柚姫(のん)は当たり屋をはねた車に当たるプロだった。柚姫の登場で和解どころではなくなった聡美・美夜親子は再び喧嘩別れしてしまう。


他の当たり屋がいなくては自身の存在意義がなくなってしまう柚姫は、唯の当たり屋修行を応援するためとの名目で、唯に中国研修を勧める。交通事情がまるで異なる中国での当たり屋活動は修行中の唯には危険すぎると反対する杜絵だったが、唯は運命的なものを感じ、富香や空人に語学留学と偽って中国に渡航する。


柚姫に紹介された現地で当たり屋修行中のリュウ野村周平)と合流した唯だったが、唯に惚れたリュウの猛烈なアプローチに辟易し、いったん帰国する。


そこで唯は、美夜が過去を立ちきるため車の前に飛び出して事故に遭い、弁護人になった慶太とただならぬ仲になっていることを知った。慶太には恋愛感情を抱いていなかった唯だったがなぜか胸のざわつきが抑えられず、空人との再会も素直に喜べない。自分の気持ちがわからなくなった唯は、空人とも慶太とも距離を置き、杜絵とともに当たりの修道に邁進する。


そうして、久しぶりに会った空人の未熟な当たり身を見て、すでに自分と空人の当たり屋技術には歴然とした差できてしまっている事を痛感する。空人より遥かに優れた当たり屋である事を隠して空人と交際し続けるのは裏切りだと感じた唯は、空人と別れ、中国のリュウのもとへ戻る事を決意する。


しかし、出発を2週間後に控えたある日、「BUMP」メンバーの寛史が当たりに失敗して死亡したとの報せが舞い込む。葬式には寛史とは軋轢がなかった聡美も参列していた。そして、聡美がなにげなく口にした昔話は、唯に驚愕の事実を知らせることとなった。それは、聡美が「BUMP」に入った時に活動していた男性の当たり屋が寛史と同じように当たりに失敗して亡くなり、千切れた交通安全御守のカケラをその男性の親友・哲(チバユウスケ)が持っているという話だった。


自分の父親も当たり屋だったのではないかという考えに取り憑かれた唯は、千切れた御守を確認して真実を確かめるため哲を探し出そうとするが、聡美も哲の行方を知らないという。唯は嗣久から「BUMP」の古いメンバーの多くが住んでいるとされる地域を教わり、中国行きを取りやめて、車に当たりながら西への旅を始める。


そこへ、唯との別れに納得していない空人が突然唯の前に姿を現したため、唯は車に当たる様子を空人に見られてしまう。空人に問い詰められ説明に窮した唯はその場を逃げ出し、泣きながら車に当たりつつ瑞彦を呼び出す。瑞彦は唯を一目見て当たり屋になった事を見抜く。杜絵との間に民事上の争いがなくなったのなら自分は用済みだと立ち去ろうとする瑞彦に、唯は哲探しへの手伝いを懇願する。


その頃、慶太は、母親が憎いが、同時に母親との唯一の繋がりが当たり屋稼業であったため、愛を欲するあまり衝動的に車に当たりにいってしまう発作に苦しむ美夜を救おうともがいていた。自然と当たり屋を激しく憎むようになった慶太は、唯が当たり屋になったと瑞彦から知らされ、唯に電話できつい言葉を浴びせる。慶太も空人も、当たり屋としてのありのままの自分を愛してくれないと絶望した唯は、当たり屋として死んだ父の遺志を受け継いで杜絵とともに当たり屋稼業を極めていくこと、そして当たり屋としての自分を受け入れてくれるリュウと仲直りをすることを決める。


哲探しの手がかりが見つからず手詰まりのまま中国に向かった唯だったが、リュウはすでに別の女当たり屋・梨花(横田真悠)と男女の仲になっていた。怒った唯は梨花に当たり屋勝負を挑む。当たりの技術は明らかに唯が上であったが、中国人の独特の運転感覚に対する勘が鈍っていたため、大怪我をしてしまう。現地の病院で療養していると、リュウから柚姫経由で連絡を受け日本から駆けつけた杜絵が現れ、再会を喜ぶととともに、瑞彦から哲を見つけ出したという伝言を言付かっていることを知らせる。 


療養・リハビリを経て退院した唯は、和解した梨花リュウからの協力も得て当たりの技術をより高次元なものにしていく。もはや中国にある全ての車種に当たったと悟った唯は、帰国して哲の情報をもらうために瑞彦のもとへと向かった。


しかし、瑞彦の事務所には慶太が来ており、当たり屋稼業から足を洗うように説得される。唯は、美夜には悲しい当たり屋人生を抜け出して真っ当な日々を歩んでほしいしそのための手伝いをできるのは慶太だけだと思うと述べた上で、自分は天性の当たり屋であり当たりで自分の生き様を示していく生き方を認めてほしいと話す。唯の話を聞いた慶太は、当たり屋になる前の唯が好きだったと言い捨ててその場を去り、瑞彦は哲の情報を唯に伝える。唯は慶太の捨て台詞に動揺しつつも哲のもとへ向かう。


哲はかつての親友・晃司の娘が突然訪ねてきたことに驚きつつも、千切れた御守の片割れを見て事情を理解し、やがて晃司との当たり屋としての思い出を懐かしく語り始める。そして、当たる時に「これで死んだらあの人に会えないな」と感じる時が誰しもあるはずで、その「あの人」こそが大切にすべき人なのだと話す。唯は運命に導かれるように自分も父と同じ道に無意識に辿り着いていた事が不思議でならないと話すと、哲は意外な返事をする。当たり屋稼業は極めるべき道ではなくただの危険行為であると、哲は言うのだった。だからこそ、人は大切な何かを簡単に失ってしまうということを実感し続けることに役立つのだと。


哲から千切れた御守りの片割れを譲り受け、二つに千切れた御守が再び合わさった時、唯が一番初めに会いたいと思ったのは母・富香だった。唯から修復された御守りを手渡された富香は全てを悟り唯を抱きしめた。そして、車に当たりながら大切なものを自分に問いかけ、唯は気づいた。自分は空人に会いにいきながら車に当たっているのだと。そして、空人との待ち合わせ場所に着くと、車に不格好にはねられる空人と、その車に当たりにいく柚姫の姿が見えるのだった。