Bustle Pannier Crinoline

バッスル・パニエ・クリノリン

私が個室DVD鑑賞店に行く理由

私が個室DVD鑑賞店に行く最大の理由は「オナニーに集中できるから」である。

 

個室DVD鑑賞店に行って、メシ食ってテレビ見てお笑いか映画のDVD見てシャワー浴びて雑誌めくって毛布にくるまって寝るだけの簡易ホテル的な使い方をすることは理論上は可能であるが、そこで一切ヌカないというヤツはいない。ほとんどのDVDの棚がエロDVDなのだから。そもそも店内には男子トイレしかないのだから簡易ホテルのはずがない。個室DVD鑑賞店が「男性がオナニーをするために作られた空間」であることは否定しようのない事実であり、これこそが私が個室DVD鑑賞店に行く理由なのである。

 

家でもAVは見られるしオナニーもできるが、私の家は集合住宅なので、近所を気にしてヘッドフォンを付けるし、「あぁッ、○○ちゃん!いいよ!いい!あぁー」などという自分の声も遠慮がちにしか出せないのである。

 

その点、個室DVD鑑賞店は、一部の店舗では各部屋が防音になっており、互いに他の部屋に音が伝わりにくくなっている。このような防音タイプの店舗ではヘッドフォンを使わずに見ることができ、ヘッドフォンを煩わしく感じる私のようなタイプの人間にとっては非常に快適だ。また、防音と言っても多少はよその部屋の音が聞こえるが、しょせんお互いに誰なのかも知らない関係であり、ご近所さんに聞かれるのは訳が違う。個室DVD鑑賞店の利用とは、オナニーをする上で発生しがちな制約を可能な限りとっぱらうことにカネを払うということなのである。

 

また、家にはオナニーに関係ない機能の方が多い。「オナニー純度」の低い空間と言うべきである。単に射精するだけならどこだっていい、ある意味公衆便所でもいいはずだ。しかし、オナニー=単なる射精ではない。オナニーとは時間を優雅に過ごすということであり、また自分自身を発見するための修行でもある。そう考えると、優雅さと厳しさのいずれの点でも自宅は不十分である。大量のAVが置いてあって「時間内でどれでも好きなだけ観てもいいし何回交換してもOK!」となっている個室DVD鑑賞店、まさに「性欲のビュッフェ」である。この贅沢感と、誰にも邪魔されないAV世界への没入感は、優雅に時間を過ごすという精神に通じる。また、「シコるためだけに作られた空間」はさしずめ「オナニー道場」であり、ドラゴンボール風に言えば「精子と時の部屋」であり、性欲ド直球の場所なのにどこかストイックな厳しさを秘めている。このように優雅さと厳しさを兼ね備えたオナニー純度の高い空間を確保することにカネを払うということも、個室DVD鑑賞店の利用の意義なのである。